こんにちは、kumaです!!
社労士試験で大事な判例集を取り上げていきます。
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(各判例は裁判所事件名、通称事件名の順で掲載しています。)

本記事の参照:裁判所ウェブサイト https://www.courts.go.jp/

なお、本記事の執筆に当たり、以下の書籍を参考にさせて頂きました。ありがとうございました。
・イラストでわかる労働判例100,社労士V受験指導班 著,日本法令 出版

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  1. 平成の判例
    1. 賃金【日本シェーリング事件】
    2. 解雇無効確認等【三井倉庫港運事件】
    3. 地位確認等【神戸弘陵学園事件】
    4. 退職金等、同請求参加【日新製鋼事件】
    5. 賃金【津田沼電車区事件】
    6. 従業員地位確認等【日立製作所武蔵工場事件】
    7. 懲戒処分無効確認等【時事通信社事件】
    8. 損害賠償【エッソ石油事件】
    9. 未払賃金【沼津交通事件】
    10. 割増賃金等【高知県観光事件】
    11. 各不当労働行為救済命令取消【ネスレ日本(東京・島田)事件】
    12. 不当労働行為救済命令取消【朝日放送事件】
    13. 地位確認等【朝日火災海上保険(高田)事件】
    14. 療養補償給付等不支給処分取消【横浜南労基署長(旭紙業)事件】
    15. 賃金債権【第四銀行事件】
    16. 地位確認、社宅明渡【朝日火災海上保険(石堂)事件】
    17. 賃金等【片山組事件】
    18. 賃金請求事件【三菱重工長崎造船所事件】
    19. 損害賠償請求事件【電通事件】
    20. 休業補償不支給決定取消請求事件【横浜南労基署長(東京海上横浜支店)事件】
    21. 地位確認等請求、仮執行の原状回復申立て事件【みちのく銀行事件】
    22. 賃金請求控訴,同附帯控訴事件【都南自動車教習所事件】
    23. 割増賃金請求事件【大星ビル管理事件】
    24. 出向命令無効確認請求事件【新日本製鐵事件】
    25. 解雇予告手当等請求本訴,損害賠償請求反訴,損害賠償等請求事件【フジ興産事件】
    26. 損害賠償請求,仮執行の原状回復等を命ずる裁判の申立て事件【東朋学園事件】
    27. 未払賃金請求事件【関西医科大学研修医事件】
    28. 労働契約上の地位確認等請求,民訴法260条2項の申立て事件【ネスレ日本事件】
    29. 賃金債権確認請求事件【神奈川信用農業協同組合事件】
    30. 組合員たる地位の不存在確認等請求事件【東芝労働組合小向支部事件】
    31. 割増手当請求事件【大林ファシリティーズ事件】
    32. 損害賠償請求本訴,同反訴事件【ことぶき事件】
    33. 地位確認等請求事件【パナソニックプラズマディスプレイ(パスコ)事件】
    34. 地位確認等請求事件【日本ヒューレット・パッカード事件】
    35. 年次有給休暇請求権存在確認等請求事件【八千代交通事件】
    36. 残業代等請求事件【阪急トラベルサポート事件】
    37. 解雇無効確認等請求事件【東芝うつ病事件】
    38. 地位確認等請求事件【広島中央保険生活協同組合事件】
    39. 懲戒処分無効確認等請求事件【海遊館事件】
    40. 損害賠償請求事件【フォーカスシステムズ事件】
    41. 地位確認等請求反訴事件【専修大学事件】
    42. 退職金請求事件【山梨県民信用組合事件】
    43. 遺族補償給付等不支給処分取消請求事件【行橋労基署長(テイクロ九州)事件】
    44. 労働契約上の地位確認等請求事件【福原学園事件】
    45. 地位確認等請求事件【医療法人社団康心会事件】
    46. 損害賠償請求事件【イビデン事件】
    47. 未払賃金等支払請求上告,同附帯上告事件【ハマキョウレックス事件】
    48. 地位確認等請求事件【長澤運輸事件】
    49. 未払賃金請求事件【日本ケミカル事件】
    50. 地位確認等請求事件【日本郵便事件】
    51. 未払賃金等,地位確認等請求事件【平尾事件】
  2. まとめ
  3. おすすめ記事

平成の判例

賃金【日本シェーリング事件】

最高裁第一小法廷 平成1年(1989年) 12月14日

判示事項
前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条項の一部が
公序に反し無効とされた事例

裁判要旨
すべての原因による不就労を基礎として算出した前年の稼働率が八〇パーセント以下の従業員を
翌年度のベースアップを含む賃金引上げの対象者から除外する旨の労働協約条項は、
そのうち労働基準法又は労働組合法上の
権利に基づくもの以外の不就労を稼働率算定の基礎とする部分は有効であるが、
右各権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分は公序に反し無効である。

解雇無効確認等【三井倉庫港運事件】

最高裁第一小法廷 平成1年(1989年) 12月14日

判示事項
ユニオン・ショップ協定の効力

裁判要旨
ユニオン・ショップ協定のうち、
締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し
又は除名されたが他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について
使用者の解雇義務を定める部分は、
民法九〇条により無効である。

地位確認等【神戸弘陵学園事件】

最高裁第三小法廷 平成2年(1990年) 6月5日

判示事項
一 労働者の新規採用契約においてその適性の評価・判断のために設けられた期間の性質
二 試用期間付雇用契約の法的性質

裁判要旨
一 労働者の新規採用契約においてその適性を評価し、
判断するために期間を設けた場合には、
右期間の満了により右契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの
特段の事情が認められる場合を除き、
右期間は契約の存続期間ではなく、
試用期間であると解するのが相当である。

二 試用期間付雇用契約により雇用された労働者が
試用期間中でない労働者と同じ職場で同じ職務に従事し、
使用者の取扱いにも格段異なるところはなく、
試用期間満了時に本採用に関する契約書作成の手続も採られていないような場合には、
他に特段の事情が認められない限り、
当該雇用契約は解約権留保付雇用契約であると解するのが相当である。

退職金等、同請求参加【日新製鋼事件】

最高裁第二小法廷 平成2年(1990年) 11月26日

判示事項
一 使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺と
労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条・一項本文
二 使用者が労働者の同意の下に労働者の退職金債権等に対してした相殺が有効とされた事例
三 使用者が労働者の同意の下に労働者の退職金債権等に対してして相殺が
否認権行使の対象とならないとされた事例

裁判要旨
一 使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺は、
右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる
合理的な理由が客観的に存在するときは、
労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条一項本文に違反しない。

二 甲会社の従業員乙が、銀行等から住宅資金の貸付けを受けるに当たり、
退職時には乙の退職金等により融資残債務を一括返済し、
甲会社に対しその返済手続を委任する等の約定をし、甲会社が、乙の同意の下に、
右委任に基づく返済費用前払請求権をもつて乙の有する退職金債権等と相殺した場合において、
右返済に関する手続を乙が自発的に依頼しており、
右貸付けが低利かつ相当長期の挽割弁済の約定の下にされたものであつて、
その利子の一部を甲会社が負担する措置が執られるなど判示の事情があるときは、
右相殺は、乙の自由な意思に基づくものと認めるに足りる
合理的な理由が客観的に存在したものとして、
有効と解すべきである。

三 甲会社の従業員乙が、銀行等から住宅資金の貸付けを受けるに当たり、
退職時には乙の退職金等により融資残債務を一括返済し、
甲会社に対しその返済手続を委任する等の約定をした場合において、
甲会社が、乙の破産宣告前、右約定の趣旨を確認する旨の乙の同意の下に、
右委任に基づく返済費用前払請求権をもつてした乙の有する退職金債権等との相殺は、
否認権行使の対象とならない。

賃金【津田沼電車区事件】

最高裁第三小法廷 平成3年(1991年) 11月19日

判示事項
労働者が自己の所属する事業場における争議行為に参加する目的をもって
職場を離脱した場合と年次有給休暇の成否

裁判要旨
労働者が請求していた年次有給休暇の時季指定日に、
たまたまその所属する事業場において予定を繰り上げてストライキが実施されることになり、
当該労働者が、右ストライキに参加しその事業場の業務の正常な運営を阻害する目的をもって、
右請求を維持して職場を離脱した場合には、
右請求に係る時季指定日に年次有給休暇は成立しない。

従業員地位確認等【日立製作所武蔵工場事件】

最高裁第一小法廷 平成3年(1991年) 11月28日

判示事項
いわゆる時間外労働の義務を定めた就業規則と労働者の義務

裁判要旨
使用者が、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三六条所定の書面による協定を締結し、
これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合において、
当該事業場に適用される就業規則に右協定の範囲内で一定の業務土の事由があれば
労働契約に定める労働時間を延長して時間外労働をさせることができる旨を定めているときは、
当該就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、
労働者は、その定めるところに従い、
労働契約に定める労働時間を超えて時間外労働をする義務を負う。
(補足意見がある。)

kuma

裁判要旨の中段の、
『右協定の範囲内で一定の業務土の事由があれば』、
の『業務土』は裁判所の記録のまま記載。

懲戒処分無効確認等【時事通信社事件】

最高裁第三小法廷 平成4年(1992年) 6月23日

判示事項
一 労働者が始期と終期を特定してした長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定に対する
使用者の時季変更権の行使における裁量的判断
二 通信社の記者が始期と終期を特定して休日等を含め約一箇月の
長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をしたのに対し
使用者が右休暇の後半部分についてした時季変更権の行使が適法とされた事例

裁判要旨
一 労働者が、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との事前の調整を経ることなく、
始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、
時季変更権の行使において、右休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、
右休暇の時期、期間につきどの程度の修正、変更を行うかに関し、
使用者にある程度の裁量的判断が認められるが、
右判断は、労働者の年次有給休暇の権利を保障している
労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三九条の趣旨に沿う
合理的なものであることを要し、
使用者が労働者に休暇を取得させるための
状況に応じた配慮を欠くなど
不合理なものであってはならない。

二 科学技術庁の記者クラブに単独配置されている通信社の社会部記者が、
使用者との事前の十分な調整を経ることなく、
始期と終期を特定して休日等を含め約一箇月の
長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をしたのに対し、
使用者が右休暇の後半部分について時季変更権を行使した場合において、
当時、社会部内において専門的知識を要する右記者の担当職務を支障なく代替し得る記者を
長期にわたって確保することが困難であり、
また、右単独配置は企業経営上のやむを得ない理由によるものであったなど
判示の事情があるときは、
右時季変更権の行使は適法である。

損害賠償【エッソ石油事件】

最高裁第一小法廷 平成5年(1993年) 3月25日

判示事項
いわゆるチェック・オフと個々の組合員からの委任の要否

裁判要旨
使用者と労働組合との間にいわゆるチェック・オフ協定が締結されている場合であっても、
使用者が有効なチェック・オフを行うためには、
賃金から控除した組合費相当分を労働組合に支払うことにつき
個々の組合員から委任を受けることが必要である。

未払賃金【沼津交通事件】

最高裁第二小法廷 平成5年(1993年) 6月25日

判示事項
タクシー会社の乗務員が月ごとの勤務予定表作成後に年次有給休暇を取得した場合に
皆勤手当を支給しない旨の約定が公序に反する無効なものとはいえないとされた事例

裁判要旨
タクシー会社の乗務員に対し、月ごとの勤務予定表どおり勤務した場合には
月額三一〇〇円ないし四一〇〇円の皆勤手当を支給するが、
右勤務予定表作成後に年次有給休暇を取得した場合には
右手当の全部又は一部を支給しない旨の約定は、
右手当の支給が代替要員の手配が困難となり
自動車の実働率が低下する事態を避ける配慮をした乗務員に対する報奨としてされ、
右手当の額も相対的に大きいものではないなどの判示の事情の下においては、
年次有給休暇取得の権利の行使を抑制して
労働基準法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとは認められず、
公序に反する無効なものとはいえない。

割増賃金等【高知県観光事件】

最高裁第二小法廷 平成6年(1994年) 6月13日

判示事項
タクシー運転手に対する月間水揚高の一定率を支給する歩合給が
時間外及び深夜の労働に対する割増賃金を含むものとはいえないとされた事例

裁判要旨
タクシー運転手に対する賃金が月間水揚高に一定の歩合を乗じて支払われている場合に、
時間外及び深夜の労働を行った場合にもその額が増額されることがなく、
通常の労働時間の賃金に当たる部分と
時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないときは、
右歩合給の支給によって労働基準法(平成五年法律第七九号による改正前のもの)三七条の規定する
時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることはできない。

各不当労働行為救済命令取消【ネスレ日本(東京・島田)事件】

最高裁第一小法廷 平成7年(1995年) 2月23日

判示事項
労働組合の組合員から組合費のチェック・オフを行ってこれを併存する別組合に交付したことが
不当労働行為に当たる場合に右組合費相当額を組合員にではなく
その所属組合に支払うことを命ずる救済命令が違法とされた事例

裁判要旨
甲労働組合の内部抗争により
それぞれ甲組合と同一名称を名乗る乙組合と丙組合とが併存するに至った後に、
使用者が、甲組合とのいわゆるチェック・オフ協定に基づき、
乙組合の組合員から組合費のチェック・オフを行い、
これを丙組合に交付したことが不当労働行為に当たる場合であっても、
右組合費相当額を、組合員個人に対してではなく、
乙組合に支払うことを命ずる救済命令は、
乙組合との間にチェック・オフ協定の締結もなく、
組合員からのその旨の委任もない以上、
救済命令に関する労働委員会の裁量権の合理的行使の限界を超えるものとして、
違法である。

不当労働行為救済命令取消【朝日放送事件】

最高裁第三小法廷 平成7年(1995年) 2月28日

判示事項
雇用主との間の請負契約により労働者の派遣を受けている事業主が労働組合法七条にいう「使用者」に当たるとされた事例

裁判要旨
事業主が雇用主との間の請負契約により派遣を受けている労働者を
その業務に従事させている場合において、
労働者が従事すべき業務の全般につき、
作業日時、作業時間、作業場所、作業内容等その細部に至るまで事業主が自ら決定し、
労働者が事業主の作業秩序に組み込まれて事業主の従業員と共に作業に従事し、
その作業の進行がすべて事業主の指揮監督の下に置かれているなど
判示の事実関係の下においては、
事業主は、労働者の基本的な労働条件等について雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に
現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあり、
その限りにおいて、労働組合法七条にいう「使用者」に当たる。

地位確認等【朝日火災海上保険(高田)事件】

最高裁第三小法廷 平成8年(1996年) 3月26日

判示事項
一 労働協約上の基準が一部の点において未組織の同種労働者の労働条件よりも
不利益である場合における労働協約の一般的拘束力
二 未組織の同種労働者に対する労働協約の一般的拘束力が一部否定された事例

裁判要旨
一 労働組合法一七条所定の要件を満たす労働協約に定める基準が一部の点において
未組織の同種労働者の労働条件よりも不利益であっても、
そのことだけで右の不利益部分について労働協約の効力を
未組織の同種労働者に及ぼし得ないとすることはできないが、
労働協約によって特定の未組織労働者にもたらされる
不利益の程度・内容、労働協約が締結されるに至った経緯、
右労働者が労働組合の組合員資格を認められているかどうか等に照らし、
労働協約を右労働者に適用することが著しく不合理であると認められる特段の事情があるときは、
その効力を右労働者に及ぼすことはできない。

二 定年年齢の改定、退職金算定方法の変更等を内容とし、
労働組合法一七条所定の要件を満たす労働協約につき、
その効力を未組織の同種労働者である甲に及ぼしたならば、
甲は、これによって定年年齢が六歳引き下げられて、
右労働協約の効力を生じたその日に、
既に定年に達していたものとして退職したことになるだけでなく、それと同時に、
その退職により取得した退職金請求権の額が
従来の退職金手当規程によって算出される金額よりも減額されることになるという
大きな不利益だけを受ける立場にあり、
しかも、甲は労働組合の組合員資格を認められていなかったなど
判示の事実関係の下においては、
従来の退職手当規程に従った退職金の支払を続けていけば
使用者の経営が著しく悪化することになるなどの事情があったとしても、
退職金の額を右金額を下回る額にまで減額するという
不利益を甲に甘受させることは著しく不合理であって、
その限りにおいて、右労働協約の効力は甲に及ぶものではない。

療養補償給付等不支給処分取消【横浜南労基署長(旭紙業)事件】

最高裁第一小法廷 平成8年(1996年) 11月28日

判示事項
車の持込み運転手が労働基準法及び労働者災害補償保険法上の労働者に当たらないとされた事例

裁判要旨
自己の所有するトラックを持ち込んで
特定の会社の製品の運送業務に従事していた運転手が、
自己の危険と計算の下に右業務に従事していた上、
右会社は、運送という業務の性質上当然に必要とされる
運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、
右運転手の業務の遂行に関し特段の指揮監督を行っておらず、
時間的、場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであったなど
判示の事実関係の下においては、右運転手が、専属的に右会社の製品の運送業務に携わっており、
同社の運送係の指示を拒否することはできず、
毎日の始業時刻及び終業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定され、
その報酬は、トラック協会が定める運賃表による運送料よりも
一割五分低い額とされていたなどの事情を考慮しても、
右運転手は、労働基準法及び労働者災害補償保険法上の労働者に当たらない。

賃金債権【第四銀行事件】

最高裁第二小法廷 平成9年(1997年) 2月28日

判示事項
五五歳から六〇歳への定年延長に伴い従前の五八歳までの定年後在職制度の下で期待することができた賃金等の労働条件に実質的な不利益を及ぼす就業規則の変更が有効とされた事例

裁判要旨
銀行が、就業規則を変更し、五五歳から六〇歳への定年延長
及びこれに伴う五五歳以降の労働条件を定めた場合において、
従前は、勤務に耐える健康状態にある男子行員が希望すれば
五八歳までの定年後在職制度の適用を受けることができるという事実上の運用がされており、
右変更により、定年後在職者が五八歳まで勤務して得ることを期待することができた賃金等の額を
六〇歳定年近くまで勤務しなければ得ることができなくなるなど、
その労働条件が実質的に不利益に変更されるとしても、
右変更は、当時六〇歳定年制の実現が社会的にも強く要請されている一方、
定年延長に伴う賃金水準等の見直しの必要性も高いという状況の中で、
行員の約九〇パーセントで組織されている労働組合からの提案を受け、
交渉、合意を経て労働協約を締結した上で行われたものであり、
従前の五五歳以降の労働条件は既得の権利とまではいえず、
変更後の就業規則に基づく賃金水準は他行や社会一般の水準と比較してかなり高いなど
判示の事情の下では、右就業規則の変更は、
不利益緩和のための経過措置がなくても、
合理的な内容のものであると認めることができないものではなく、
右変更の一年半後に五五歳を迎える男子行員に対しても効力を生ずる。

地位確認、社宅明渡【朝日火災海上保険(石堂)事件】

最高裁第一小法廷 平成9年(1997年) 3月27日

判示事項
一部の組合員の定年及び退職金支給基準率を不利益に変更する
労働協約の規範的効力が認められた事例

裁判要旨
定年の改定及び退職金支給基準率の変更を主たる内容とする労働協約に定められた基準を
右協約締結当時五三歳であった組合員甲に適用すると、
甲は、定年が六三歳から五七歳に、退職金支給基準率が七一・〇から五一・〇に引き下げられるという
不利益を受けることになる場合であっても、
甲が雇用されていた会社には、定年が六三歳の従業員と五五歳の従業員とがあり、
定年の統一が長年の懸案事項であったところ、
会社は、右協約締結の数年前から経営危機に陥り、
定年の統一と退職金算定方法の改定を会社再建のための重要な施策と位置付けて組合との交渉を重ね、
組合も、その決議機関における討議のほか、
組合員による職場討議や投票等も行った上で右協約の締結に至ったものであり、
右組合員の六三歳という従前の定年は、
特殊な事情に由来する当時としては異例のものであって、
右協約に定められた定年や退職金支給基準率は、
当時の業界の水準と対比して低水準のものとはいえないなど
判示の事実関係の下においては、
甲に対する右協約の規範的効力を否定する理由はない。

賃金等【片山組事件】

最高裁第一小法廷 平成10年(1998年) 4月9日

判示事項
労働者が疾病のためその命じられた義務のうち
一部の労務の提供ができなくなったことから
直ちに債務の本旨に従った労務の提供をしなかったものと
断定することはできないとされた事例

裁判要旨
建設会社に雇用されて以来二一年以上にわたり
建築工事現場における現場監督業務に従事してきた労働者が、
疾病のため右業務のうち現場作業に係る労務の提供ができなくなった場合であっても、
労働契約上その職種や業務内容が右業務に限定されていたとはいえず、
事務作業に係る労務の提供は可能であり、
かつ、その提供を申し出ていたときには、
同人の能力、経験、地位、右会社の規模、業種、
右会社における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして
同人が配置される現実的可能性があると認められる業務が他にあったかどうかを検討した上でなければ、
同人が債務の本旨に従った労務の提供をしなかったものと断定することはできない。

賃金請求事件【三菱重工長崎造船所事件】

最高裁第一小法廷 平成12年(2000年) 3月9日

判示事項
一 労働基準法上の労働時間の意義
二 労働者が就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを
使用者から義務付けられ又はこれを余儀なくされた場合における当該行為に要した時間と
労働基準法上の労働時間
三 労働者が始業時刻前及び終業時刻後の作業服及び保護具等の着脱等
並びに始業時刻前の副資材等の受出し及び散水に要した時間が
労働基準法上の労働時間に該当するとされた事例

裁判要旨
一 労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間とは、
労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、
右の労働時間に該当するか否かは、
労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより
客観的に定まるものであって、
労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではない。

二 労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を
事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、
又はこれを余儀なくされたときは、当該行為は、
特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、
当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、
労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間に該当する。

三 就業規則により、始業に間に合うよう更衣等を完了して作業場に到着し、
所定の始業時刻に作業場において実作業を開始し、所定の終業時刻に実作業を終了し、
終業後に更衣等を行うものと定め、
また、始終業の勤怠は更衣を済ませ始業時に準備体操場にいるか否か、
終業時に作業場にいるか否かを基準として判断する旨定めていた造船所において、
労働者が、始業時刻前に更衣所等において作業服及び保護具等を装着して準備体操場まで移動し、
副資材等の受出しをし、散水を行い、
終業時刻後に作業場等から更衣所等まで移動して作業服及び保護具等の脱離等を行った場合、
右労働者が、使用者から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられ、
右装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされ、
副資材等の受出し及び散水を始業時刻前に行うことを義務付けられていたなど
判示の事実関係の下においては、右装着及び準備体操場までの移動、
右副資材等の受出し及び散水並びに右更衣所等までの移動及び脱離等は、
使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、
労働者が右各行為に要した社会通念上必要と認められる時間は、
労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間に該当する。

損害賠償請求事件【電通事件】

最高裁第二小法廷 平成12年(2000年) 3月24日

判示事項
一 長時間にわたる残業を恒常的に伴う業務に従事していた労働者が
うつ病にり患し自殺した場合に使用者の民法七一五条に基づく損害賠償責任が肯定された事例
二 業務の負担が過重であることを原因として心身に生じた損害につき
労働者がする不法行為に基づく賠償請求において使用者の賠償額を決定するに当たり
右労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等をしんしゃくすることの可否

裁判要旨
一 大手広告代理店に勤務する労働者甲が
長時間にわたり残業を行う状態を一年余り継続した後にうつ病にり患し自殺した場合において、
甲は、業務を所定の期限までに完了させるべきものとする
一般的、包括的な指揮又は命令の下にその遂行に当たっていたため、
継続的に長時間にわたる残業を行わざるを得ない状態になっていたものであって、
甲の上司は、甲が業務遂行のために徹夜までする状態にあることを認識し、
その健康状態が悪化していることに気付いていながら、
甲に対して業務を所定の期限内に遂行すべきことを前提に時間の配分につき指導を行ったのみで、
その業務の量等を適切に調整するための措置を採らず、
その結果、甲は、心身共に疲労困ぱいした状態となり、
それが誘因となってうつ病にり患し、うつ状態が深まって衝動的、突発的に自殺するに至ったなど
判示の事情の下においては、使用者は、民法七一五条に基づき、
甲の死亡による損害を賠償する責任を負う。

二 業務の負担が過重であることを原因として労働者の心身に生じた損害の発生又は拡大に
右労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が寄与した場合において、
右性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでないときは、
右損害につき使用者が賠償すべき額を決定するに当たり、
右性格等を、民法七二二条二項の類推適用により
右労働者の心因的要因としてしんしゃくすることはできない。

休業補償不支給決定取消請求事件【横浜南労基署長(東京海上横浜支店)事件】

最高裁第一小法廷 平成12年(2000年) 7月17日

判示事項
支店長付きの運転手が自動車運転の業務中に発症したくも膜下出血が業務上の疾病に当たるとされた事例

裁判要旨
支店長付きの運転手として自動車運転の業務に従事していた者が
早朝支店長を迎えに行くため運転中くも膜下出血を発症した場合において、
同人が右発症に至るまで相当長期間にわたり従事していた右業務は精神的緊張を伴う不規則なものであり、
その労働密度は決して低くはなく、
右発症の約半年前以降は一日平均の時間外労働時間が七時間を上回り、
一日平均の走行距離も長く、右発症の前日から当日にかけての勤務も、
前日の午前五時五〇分に出庫し、午後七時三〇分ころ車庫に帰った後、
午後一一時ころまで掛かってオイル漏れの修理をして午前一時ころ就寝し、
わずか三時間三〇分程度の睡眠の後、午前四時三〇分ころ起床し、
午前五時の少し前に当日の業務を開始したというものであり、
それまでの長期間にわたる過重な業務の継続と相まって、
同人にかなりの精神的、身体的負荷を与えたものとみるべきであって、
他方で、同人は、くも膜下出血の発症の基礎となり得る疾患を有していた蓋然性が高い上、
くも膜下出血の危険因子として挙げられている高血圧症が進行していたが、
治療の必要のない程度のものであったなど判示の事情の下においては、
同人の発症したくも膜下出血は業務上の疾病に当たる。

地位確認等請求、仮執行の原状回復申立て事件【みちのく銀行事件】

最高裁第一小法廷 平成12年(2000年) 9月7日

判示事項
六〇歳定年制を採用していた銀行における五五歳以上の行員を対象に
専任職制度を導入する就業規則の変更のうち賃金減額の効果を有する部分が
これに同意しない右行員に対し効力を生じないとされた事例

裁判要旨
六〇歳定年制を採用していた銀行が、就業規則を変更し、
五五歳に達した行員を新設の専任職に発令するとともに、
その基本給を五五歳到達直前の額で凍結し、
業績給を一律に五〇パーセント減額し、管理職手当及び役職手当は支給せず、
賞与の支給率を削減するなどという専任職制度を導入した場合において、
右就業規則の変更のうち賃金減額の効果を有する部分については、
職務の軽減が図られていないにもかかわらず、
右変更により専任職に発令された行員の退職時までの賃金が三割前後も削減され、
代償措置は不十分であり、右変更後の賃金水準は高年層の事務職員のものとしては格別高いものとはいえず、
他方、右変更により中堅層の賃金は格段の改善がされ、
人件費全体は逆に上昇しているのであって、
右変更は、中堅層の労働条件を改善する代わりに
高年層の労働条件を一方的に引き下げたものといわざるを得ず、
賃金水準切下げの差し迫った必要性に基づいてされたものではなく、
執られた経過措置も高年層を適切に救済するものとはいえないなど
判示の事情の下では、右部分は、高度の必要性に基づいた
合理的な内容のものであるということはできず、
これに同意しない右行員に対し効力を生じない。

六〇歳定年制を採用していた銀行における五五歳以上の行員を対象に
五五歳以上の行員の賃金に不利益を及ぼす就業規則の変更が右行員に対し効力を生じないとされた事例

賃金請求控訴,同附帯控訴事件【都南自動車教習所事件】

最高裁第三小法廷 平成13年(2001年) 3月13日

判示事項
労働組合と使用者との間の労働条件その他に関する合意で書面の作成がなく
又は作成した書面に両当事者の署名及び記名押印がないものの労働協約としての規範的効力

裁判要旨
労働組合と使用者との間の労働条件その他に関する合意は,
書面に作成され,かつ,両当事者がこれに署名し又は記名押印しない限り,
労働協約としての規範的効力を生じない。

割増賃金請求事件【大星ビル管理事件】

最高裁第一小法廷 平成14年(2002年) 2月28日

判示事項
1 実作業に従事していない仮眠時間と労働基準法上の労働時間
2 ビル管理会社の従業員が従事する泊り勤務の間に設定されている
連続7時間ないし9時間の仮眠時間が労働基準法上の労働時間に当たるとされた事例

裁判要旨
1 労働者が実作業に従事していない仮眠時間であっても,
労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には,
労働からの解放が保障されているとはいえず,
労働者は使用者の指揮命令下に置かれているものであって,
労働基準法32条の労働時間に当たる。

2 ビル管理会社の従業員が従事する泊り勤務の間に設定されている
連続7時間ないし9時間の仮眠時間は,
従業員が労働契約に基づき仮眠室における待機と警報や電話等に対して
直ちに相当の対応をすることを義務付けられており,
そのような対応をすることが皆無に等しいなど
実質的に上記義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しないなど
判示の事実関係の下においては,
実作業に従事していない時間も含め全体として従業員が使用者の指揮命令下に置かれているものであり,
労働基準法32条の労働時間に当たる。

出向命令無効確認請求事件【新日本製鐵事件】

最高裁第二小法廷 平成15年(2003年) 4月18日

判示事項
使用者が労働者に対し個別的同意なしにいわゆる在籍出向を命ずることができるとされた事例

裁判要旨
出向命令の内容が,使用者が一定の業務を協力会社に業務委託することに伴い,
委託される業務に従事していた労働者に対していわゆる在籍出向を命ずるものであって,
就業規則及び労働協約には業務上の必要によって社外勤務をさせることがある旨の規定があり,
労働協約には社外勤務の定義,出向期間,出向中の社員の地位,賃金その他処遇等に関して
出向労働者の利益に配慮した詳細な規定があるという事情の下においては,
使用者は,当該労働者に対し,個別的同意なしに出向を命ずることができる。

解雇予告手当等請求本訴,損害賠償請求反訴,損害賠償等請求事件【フジ興産事件】

最高裁第二小法廷 平成15年(2003年) 10月10日

判示事項
1 使用者による労働者の懲戒と就業規則の懲戒に関する定めの要否
2 就業規則に拘束力を生ずるための要件

裁判要旨
1 使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。
2 就業規則が法的規範として拘束力を生ずるためには,
その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する。

損害賠償請求,仮執行の原状回復等を命ずる裁判の申立て事件【東朋学園事件】

最高裁第一小法廷 平成15年(2003年) 12月4日

判示事項
1 出勤率が90%以上の従業員を賞与支給対象者とする旨の就業規則条項の適用に関し
その基礎とする出勤した日数に産前産後休業の日数等を含めない旨の定めが公序に反し無効とされた事例
2 賞与の額を欠勤日数に応じて減額することを内容とする計算式の適用に当たり
産前産後休業の日数等を欠勤日数に含めた所定の減額を行わずに賞与全額の支払請求を認容した
原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨
1 出勤率が90%以上の従業員を賞与支給対象者とし
これに満たない者には賞与を支給しないこととする旨の就業規則条項の適用に関し,
出勤率算定の基礎とする出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し,
出勤した日数に上記日数及び育児を容易にするための措置により
短縮された勤務時間分を含めない旨を定めた就業規則の付属文書の定めは,
従業員の年間総収入額に占める賞与の比重が高いため,
上記条項により賞与が支給されない者の受ける経済的不利益が大きく,
従業員が産前産後休業を取得し又は勤務時間短縮措置を受けた場合には,
それだけで上記条項に該当して賞与の支給を受けられなくなる可能性が高いという事情の下においては,
公序に反し無効である。

2 賞与の額を欠勤日数に応じて減額することを内容とする計算式及びその適用に当たり
その基礎となる欠勤日数に産前産後休業の日数及び育児を容易にするための措置により
短縮された勤務時間分を含める旨を定めた
就業規則の付属文書の定めが無効となる理由を具体的に説示することなく,
上記計算式を適用せず,産前産後休業の日数等を欠勤日数に含め
た所定の減額を行わずに賞与全額の支払請求を認容した
原審の判断には,違法がある。
(2につき意見及び反対意見がある。)

未払賃金請求事件【関西医科大学研修医事件】

最高裁第二小法廷 平成17年(2005年) 6月3日

判示事項
医師法(平成11年法律第160号による改正前のもの)16条の2第1項所定の臨床研修を行う医師と
労働基準法(平成10年法律第112号による改正前のもの)9条所定の労働者

裁判要旨
医師法(平成11年法律第160号による改正前のもの)16条の2第1項所定の
臨床研修として病院において研修プログラムに従い臨床研修指導医の指導の下に医療行為等に従事する医師は,
病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り,
労働基準法(平成10年法律第112号による改正前のもの)9条所定の労働者に当たる。

労働契約上の地位確認等請求,民訴法260条2項の申立て事件【ネスレ日本事件】

最高裁第二小法廷 平成18年(2006年) 10月6日

判示事項
従業員が職場で上司に対する暴行事件を起こしたことなどが
就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとして暴行事件から7年以上経過した後にされた
諭旨退職処分が権利の濫用として無効とされた事例

裁判要旨
従業員が職場で上司に対する暴行事件を起こしたことなどが
就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとして,
使用者が捜査機関による捜査の結果を待った上で上記事件から7年以上経過した後に
諭旨退職処分を行った場合において,上記事件には目撃者が存在しており,
捜査の結果を待たずとも使用者において処分を決めることが十分に可能であったこと,
上記諭旨退職処分がされた時点で企業秩序維持の観点から
重い懲戒処分を行うことを必要とするような状況はなかったことなど
判示の事情の下では,上記諭旨退職処分は,
権利の濫用として無効である。

賃金債権確認請求事件【神奈川信用農業協同組合事件】

最高裁第一小法廷 平成19年(2007年) 1月18日

判示事項
定年前に退職する従業員に対して定年退職の扱いとし
割増退職金を支給することなどを内容とする選択定年制に基づき退職の申出をしたが
承認のされなかった従業員について上記選択定年制による退職の効果が生じないとされた事例

裁判要旨
定年前に退職する従業員に対して
定年退職の扱いとし割増退職金を支給することなどを内容とする
選択定年制が定められている場合において,
従業員からの申出に対し使用者がこれを承認することによって
上記選択定年制による退職の効果が生ずるものとされており,
使用者が承認をするかどうかに関し就業規則等において
特段の制限が設けられていないなど判示の事情の下では,
上記選択定年制に基づき退職の申出をしたが承認のされなかった従業員については,
上記選択定年制による退職の効果は生じない。

組合員たる地位の不存在確認等請求事件【東芝労働組合小向支部事件】

最高裁第二小法廷 平成19年(2007年) 2月2日

判示事項
従業員と使用者との間でされた従業員に対し
特定の労働組合から脱退する権利を行使しないことを義務付ける合意と公序良俗違反

裁判要旨
従業員と使用者との間において
従業員が特定の労働組合に所属し続けることを義務付ける内容の合意がされた場合において,
同合意のうち,従業員に上記労働組合から脱退する権利をおよそ行使しないことを義務付けて
脱退の効力そのものを生じさせないとする部分は,
公序良俗に反し無効である。

割増手当請求事件【大林ファシリティーズ事件】

最高裁第二小法廷 平成19年(2007年) 10月19日

判示事項
1 マンションの住み込み管理員が所定労働時間の前後の一定の時間に
断続的な業務に従事していた場合において,上記一定の時間が,
管理員室の隣の居室に居て実作業に従事していない時間を含めて
労働基準法上の労働時間に当たるとされた事例
2 マンションの住み込み管理員である夫婦が
雇用契約上の休日である土曜日も管理員としての業務に従事していた場合において,
土曜日については,夫婦のうち1人のみが業務に従事したものとして
労働時間を算定するのが相当であるとされた事例
3 マンションの住み込み管理員が土曜日を除く
雇用契約上の休日に断続的な業務に従事していた場合において,
使用者が明示又は黙示に上記休日に行うことを指示したと認められる業務に
現実に従事した時間のみが労働基準法上の労働時間に当たるとされた事例

裁判要旨
1 マンションの住み込み管理員が所定労働時間の
開始前及び終了後の一定の時間に断続的な業務に従事していた場合において,
(1)使用者は,上記一定の時間内の各所定の時刻に管理員室の照明の点消灯,ごみ置場の扉の開閉,冷暖房装置の運転の開始及び停止等の業務を行うよう指示していたこと,
(2)使用者が作成したマニュアルには,管理員は所定労働時間外においても,
住民等から宅配物の受渡し等の要望が出される都度,これに随時対応すべき旨が記載されていたこと,
(3)使用者は,管理員から定期的に業務の報告を受け,
管理員が所定労働時間外においても上記要望に対応していた事実を認識していたことなど
判示の事実関係の下では,上記一定の時間は,
管理員室の隣の居室に居て実作業に従事していない時間を含めて,
その間,管理員が使用者の指揮命令下に置かれていたものであり,
労働基準法32条の労働時間に当たる。

2 マンションの住み込み管理員である夫婦が
雇用契約上の休日である土曜日も使用者の指示により平日と同様の業務に従事していた場合において,
使用者は,土曜日は1人体制で執務するよう明確に指示し,
同人らもこれを承認していたこと,
土曜日の業務量が1人では処理できないようなものであったともいえないことなど
判示の事情の下では,土曜日については,
同人らのうち1人のみが業務に従事したものとして
労働時間を算定するのが相当である。

3 マンションの住み込み管理員が土曜日を除く
雇用契約上の休日に断続的な業務に従事していた場合において,
使用者が,管理員に対して,管理員室の照明の点消灯及びごみ置場の扉の開閉以外には
上記休日に業務を行うべきことを明示に指示していなかったなど判示の事実関係の下では,
使用者が上記休日に行うことを明示又は黙示に指示したと認められる業務に
現実に従事した時間のみが労働基準法32条の労働時間に当たる。

損害賠償請求本訴,同反訴事件【ことぶき事件】

最高裁第二小法廷 平成21年(2009年) 12月18日

判示事項
いわゆる管理監督者に該当する労働者が深夜割増賃金を請求することの可否

裁判要旨
労働基準法41条2号所定のいわゆる管理監督者に該当する労働者は,
同法37条3項に基づく深夜割増賃金を請求することができる。

地位確認等請求事件【パナソニックプラズマディスプレイ(パスコ)事件】

最高裁第二小法廷 平成21年(2009年) 12月18日

判示事項
請負人と雇用契約を締結し注文者の工場に派遣されていた労働者が
注文者から直接具体的な指揮命令を受けて作業に従事していたために,
請負人と注文者の関係がいわゆる偽装請負に当たり,
上記の派遣を違法な労働者派遣と解すべき場合に,
注文者と当該労働者との間に雇用契約関係が
黙示的に成立していたとはいえないとされた事例

裁判要旨
請負人と雇用契約を締結し注文者の工場に派遣されていた労働者が
注文者から直接具体的な指揮命令を受けて作業に従事していたために,
請負人と注文者の関係がいわゆる偽装請負に当たり,
上記の派遣を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」
に違反する労働者派遣と解すべき場合において,
(1)上記雇用契約は有効に存在していたこと,
(2)注文者が請負人による当該労働者の採用に関与していたとは認められないこと,
(3)当該労働者が請負人から支給を受けていた給与等の額を注文者が事実上決定していたといえるような事情はうかがわれないこと,
(4)請負人が配置を含む当該労働者の具体的な就業態様を一定の限度で決定し得る地位にあったことなど
判示の事情の下では,注文者と当該労働者との間に
雇用契約関係が黙示的に成立していたとはいえない。

地位確認等請求事件【日本ヒューレット・パッカード事件】

最高裁第二小法廷 平成24年(2012年) 4月27日

判示事項
従業員の欠勤が就業規則所定の懲戒事由である
正当な理由のない無断欠勤に当たるとしてされた
諭旨退職の懲戒処分が無効であるとされた事例

裁判要旨
従業員が,被害妄想など何らかの精神的な不調のために,
実際には事実として存在しないにもかかわらず,
約3年間にわたり盗撮や盗聴等を通じて自己の日常生活を
子細に監視している加害者集団が職場の同僚らを通じて
自己に関する情報のほのめかし等の嫌がらせを行っているとの認識を有しており,
上記嫌がらせにより業務に支障が生じており上記情報が外部に漏えいされる危険もあると考えて,
自分自身が上記の被害に係る問題が解決されたと判断できない限り出勤しない旨を
あらかじめ使用者に伝えた上で,有給休暇を全て取得した後,
約40日間にわたり欠勤を続けたなど判示の事情の下では,
上記欠勤は就業規則所定の懲戒事由である
正当な理由のない無断欠勤に当たるとはいえず,
上記欠勤が上記の懲戒事由に当たるとしてされた
諭旨退職の懲戒処分は無効である。

年次有給休暇請求権存在確認等請求事件【八千代交通事件】

最高裁第一小法廷 平成25年(2013年) 6月6日

判示事項
労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日と
労働基準法39条1項及び2項における年次有給休暇権の成立要件としての
全労働日に係る出勤率の算定の方法

裁判要旨
無効な解雇の場合のように労働者が使用者か
ら正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は,
労働基準法39条1項及び2項における年次有給休暇権の成立要件としての
全労働日に係る出勤率の算定に当たっては,
出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれる。

残業代等請求事件【阪急トラベルサポート事件】

最高裁第二小法廷 平成26年(2014年) 1月24日

判示事項
募集型の企画旅行における添乗員の業務につき,
労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとされた事例

裁判要旨
募集型の企画旅行における添乗員の業務については,
次の(1),(2)など判示の事情の下では,
労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえない。

(1) 当該業務は,旅行日程がその日時や目的地等を明らかにして定められることによって,
その内容があらかじめ具体的に確定されており,
添乗員が自ら決定できる事項の範囲及びその決定に係る選択の幅は限られている。

(2) 当該業務について,上記企画旅行を主催する旅行業者は,添乗員との間で,
あらかじめ定められた旅行日程に沿った旅程の管理等の業務を行うべきことを具体的に指示した上で,
予定された旅行日程に途中で相応の変更を要する事態が生じた場合には
その時点で個別の指示をするものとされ,
旅行日程の終了後は内容の正確性を確認し得る添乗日報によって
業務の遂行の状況等につき詳細な報告を受けるものとされている。

解雇無効確認等請求事件【東芝うつ病事件】

最高裁第二小法廷 平成26年(2014年) 3月24日

判示事項
労働者に過重な業務によって鬱病が発症し増悪した場合において,
使用者の安全配慮義務違反等に基づく損害賠償の額を定めるに当たり,
当該労働者が自らの精神的健康に関する一定の情報を使用者に申告しなかったことをもって
過失相殺をすることができないとされた事例

裁判要旨
労働者に過重な業務によって鬱病が発症し増悪した場合において,
次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,
使用者の安全配慮義務違反等に基づく損害賠償の額を定めるに当たり,
当該労働者が自らの精神的健康に関する一定の情報を使用者に申告しなかったことをもって
過失相殺をすることはできない。

(1) 当該労働者は,鬱病発症以前の数か月に休日や深夜を含む相応の時間外労働を行い,
その間,最先端の製品の製造に係るプロジェクトの工程で初めて技術担当者のリーダーになって
その職責を担う中で,業務の期限や日程を短縮されて督促等を受け,
上記工程の技術担当者を理由の説明なく減員された上,
過去に経験のない異種の製品の開発等の業務も新たに命ぜられるなど,
その業務の負担は相当過重であった。

(2) 上記情報は,神経科の医院への通院,その診断に係る病名,神経症に適応のある薬剤の処方等を内容とし,労働者のプライバシーに属する情報であり,人事考課等に影響し得る事柄として通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であった。

(3) 上記(1)の過重な業務が続く中で,当該労働者は,同僚から見ても体調が悪い様子で仕事を円滑に行えるようには見えず,頭痛等の体調不良が原因であると上司に伝えた上で欠勤を繰り返して重要な会議を欠席し,それまでしたことのない業務の軽減の申出を行い,産業医にも上記欠勤の事実等を伝え,使用者の実施する健康診断でも頭痛,不眠,いつもより気が重くて憂鬱になる等の症状を申告するなどしていた。

地位確認等請求事件【広島中央保険生活協同組合事件】

最高裁第一小法廷 平成26年(2014年) 10月23日

判示事項
女性労働者につき妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させる事業主の措置の,
「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」9条3項の
禁止する取扱いの該当性

裁判要旨
女性労働者につき労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換を契機として
降格させる事業主の措置は,
原則として「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」9条3項の
禁止する取扱いに当たるが,
当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる
合理的な理由が客観的に存在するとき,
又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易な業務への転換をさせることに
円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって,
上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる
特段の事情が存在するときは,
同項の禁止する取扱いに当たらない。

懲戒処分無効確認等請求事件【海遊館事件】

最高裁第一小法廷 平成27年(2015年) 2月26日

判示事項
職場における性的な内容の発言等によるセクシュアル・ハラスメント等を理由としてされた懲戒処分が
懲戒権を濫用したものとはいえず有効であるとされた事例

裁判要旨
会社の管理職である男性従業員2名が同一部署内で勤務していた女性従業員らに対して
それぞれ職場において行った性的な内容の発言等による
セクシュアル・ハラスメント等を理由としてされた出勤停止の各懲戒処分は,
次の(1)~(4)など判示の事情の下では,
懲戒権を濫用したものとはいえず,有効である。

(1) 上記男性従業員らは,①うち1名が,女性従業員Aが執務室において1人で勤務している際,
同人に対し,自らの不貞相手に関する性的な事柄や自らの性器,性欲等についての
極めて露骨で卑わいな内容の発言を繰り返すなどし,
②他の1名が,当該部署に異動した当初に
上司から女性従業員に対する言動に気を付けるよう注意されていながら,
女性従業員Aの年齢や女性従業員A及びBが未婚であることなどを殊更に取り上げて
著しく侮蔑的ないし下品な言辞で同人らを侮辱し又は困惑させる発言を繰り返し,
女性従業員Aの給与が少なく夜間の副業が必要であるなどとやゆする発言をするなど,
同一部署内で勤務していた派遣労働者等の立場にある女性従業員Aらに対し職場において
1年余にわたり多数回のセクシュアル・ハラスメント等を繰り返した。

(2) 上記会社は,職場におけるセクシュアル・ハラスメントの防止を重要課題と位置付け,
その防止のため,従業員らに対し,禁止文書を周知させ,
研修への毎年の参加を義務付けるなど種々の取組を行っており,
上記男性従業員らは,上記の研修を受けていただけでなく,
管理職として上記会社の方針や取組を十分に理解して部下職員を指導すべき立場にあった。

(3) 上記(1)①及び②の各行為によるセクシュアル・ハラスメント等を受けた女性従業員Aは,
上記各行為が一因となって,上記会社での勤務を辞めることを余儀なくされた。

(4) 上記出勤停止の期間は,上記(1)①の1名につき30日,同②の1名につき10日であった。

損害賠償請求事件【フォーカスシステムズ事件】

最高裁大法廷 平成27年(2015年) 3月4日

判示事項
1 不法行為によって死亡した被害者の損害賠償請求権を取得した相続人が
労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受けるなどした場合に,
上記の遺族補償年金との間で損益相殺的な調整を行うべき損害
2 不法行為によって死亡した被害者の損害賠償請求権を取得した相続人が
労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受けるなどしたとして
損益相殺的な調整をするに当たって,
損害が塡補されたと評価すべき時期

裁判要旨
1 被害者が不法行為によって死亡した場合において,
その損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受け,
又は支給を受けることが確定したときは,損害賠償額を算定するに当たり,
上記の遺族補償年金につき,
その塡補の対象となる被扶養利益の喪失による損害と同性質であり,
かつ,相互補完性を有する逸失利益等の消極損害の元本との間で,
損益相殺的な調整を行うべきである。

2 被害者が不法行為によって死亡した場合において,
その損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受け,
又は支給を受けることが確定したときは,
制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,
その塡補の対象となる損害は不法行為の時に塡補されたものと法的に評価して
損益相殺的な調整をすることが相当である。

地位確認等請求反訴事件【専修大学事件】

最高裁第二小法廷 平成27年(2015年) 6月8日

判示事項
労働者災害補償保険法による療養補償給付を受ける労働者につき,
使用者が労働基準法81条所定の打切補償の支払をすることにより,
解雇制限の除外事由を定める同法19条1項ただし書の適用を受けることの可否

裁判要旨
労働者災害補償保険法12条の8第1項1号の療養補償給付を受ける労働者が,
療養開始後3年を経過しても疾病等が治らない場合には,
使用者は,当該労働者につき,労働基準法81条の規定による打切補償の支払をすることにより,
解雇制限の除外事由を定める同法19条1項ただし書の適用を受けることができる。

退職金請求事件【山梨県民信用組合事件】

最高裁第二小法廷 平成28年(2016年) 2月19日

判示事項
1 就業規則に定められた賃金や
退職金に関する労働条件の変更に対す
る労働者の同意の有無についての判断の方法
2 合併により消滅する信用協同組合の職員が,
合併前の就業規則に定められた退職金の支給基準を変更することに
同意する旨の記載のある書面に署名押印をした場合において,
上記変更に対する当該職員の同意があるとした原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨
1 就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,
当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,
当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,
労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様,
当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして,
当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる
合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,判断されるべきである。

2 合併により消滅する信用協同組合の職員が,
合併前の就業規則に定められた退職金の支給基準を変更することに
同意する旨の記載のある書面に署名押印をした場合において,
その変更は上記組合の経営破綻を回避するための上記合併に際して行われたものであったが,
上記変更後の支給基準の内容は,
退職金総額を従前の2分の1以下とした上で
厚生年金制度に基づく加算年金の現価相当額等を控除するというものであって,
自己都合退職の場合には支給される退職金額が0円となる可能性が高かったことなど判示の事情の下で,
当該職員に対する情報提供や説明の内容等についての十分な認定,考慮をしていないなど,
上記署名押印が当該職員の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる
合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点から審理を尽くすことなく,
上記署名押印をもって上記変更に対する当該職員の同意があるとした
原審の判断には,違法がある。

遺族補償給付等不支給処分取消請求事件【行橋労基署長(テイクロ九州)事件】

最高裁第二小法廷 平成28年(2016年) 7月8日

判示事項
労働者が,業務を一時中断して事業場外で行われた研修生の歓送迎会に途中から参加した後,
当該業務を再開するため自動車を運転して事業場に戻る際に,
研修生をその住居まで送る途上で発生した交通事故により死亡したことが,
労働者災害補償保険法1条,12条の8第2項の業務上の事由による災害に当たるとされた事例

裁判要旨
労働者が,業務を一時中断して事業場外で行われた研修生の歓送迎会に途中から参加した後,
当該業務を再開するため自動車を運転して事業場に戻る際に,
研修生をその住居まで送る途上で発生した交通事故により死亡したことは,
次の⑴~⑶など判示の事情の下においては,
労働者災害補償保険法1条,12条の8第2項の業務上の事由による災害に当たる。

⑴ 上記労働者が業務を一時中断して上記歓送迎会に途中から参加した後に事業場に戻ることになったのは,
上司から歓送迎会への参加を打診された際に,
業務に係る資料の提出期限が翌日に迫っていることを理由に断ったにもかかわらず,
歓送迎会に参加してほしい旨の強い意向を示されるなどしたためであった。

⑵ 上記歓送迎会は,事業主が事業との関連で
親会社の中国における子会社から研修生を定期的に受け入れるに当たり,
上司の発案により,研修生と従業員との親睦を図る目的で開催されてきたものであって,
従業員及び研修生の全員が参加し,その費用が事業主の経費から支払われるなどしていた。

⑶ 上記労働者は,事業主の所有する自動車を運転して研修生をその住居まで送っていたところ,
研修生を送ることは,歓送迎会の開催に当たり,
上司により行われることが予定されていたものであり,
その経路は,事業場に戻る経路から大きく逸脱するものではなかった。

労働契約上の地位確認等請求事件【福原学園事件】

最高裁第一小法廷 平成28年(2016年) 12月1日

判示事項
私立大学の教員に係る期間1年の有期労働契約が3年の更新限度期間の満了後に
期間の定めのないものとなったとはいえないとされた事例

裁判要旨
私立大学の教員に係る期間1年の有期労働契約は,

①当該労働契約において,
3年の更新限度期間の満了時に労働契約を期間の定めのないものとすることができるのは,
これを希望する教員の勤務成績を考慮して当該大学を運営する学校法人が必要であると認めた場合
である旨が明確に定められており,
当該教員もこのことを十分に認識した上で当該労働契約を締結したものとみることができること,

②大学の教員の雇用については一般に流動性のあることが想定されていること,

③当該学校法人が運営する三つの大学において,
3年の更新限度期間の満了後に労働契約が期間の定めのないものとならなかった教員も
複数に上っていたことなど判示の事情の下においては,
当該労働契約に係る上記3年の更新限度期間の満了後に期間の定めのないものとなったとはいえない。
(補足意見がある。)

地位確認等請求事件【医療法人社団康心会事件】

最高裁第二小法廷 平成29年(2017年) 7月7日

判示事項
医療法人と医師との間の雇用契約において
時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていたとしても,
当該年俸の支払により時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということはできないとされた事例

裁判要旨
医療法人と医師との間の雇用契約において
時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていたとしても,
当該年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分が明らかにされておらず,
通常の労働時間の賃金に当たる部分と
割増賃金に当たる部分とを判別することができないという事情の下では,
当該年俸の支払により,
時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということはできない。

損害賠償請求事件【イビデン事件】

最高裁第一小法廷 平成30年(2018年) 2月15日

判示事項
親会社が,自社及び子会社等のグループ会社における法令遵守体制を整備し,
法令等の遵守に関する相談窓口を設け,
現に相談への対応を行っていた場合において,
親会社が子会社の従業員による相談の申出の際に求められた対応をしなかったことをもって,
信義則上の義務違反があったとはいえないとされた事例

裁判要旨
Y社が,法令等の遵守に関する社員行動基準を定め,
自社及び子会社である甲社,
乙社等のグループ会社から成る企業集団の業務の適正等を確保するための体制を整備し,
その一環として,上記グループ会社の事業場内で就労する者から
法令等の遵守に関する相談を受ける相談窓口を設け,
上記の者に対し,上記相談窓口に係る制度を周知してその利用を促し,
現に上記相談窓口における相談への対応を行っていた場合において,
甲社の従業員が,上記相談窓口に対し,
甲社の元契約社員であって退職後は派遣会社を介して
Y社の別の事業場内で勤務していたXのために,
Xの元交際相手である乙社の従業員Aが
Xの自宅の近くに来ているようなので事実確認等の対応をしてほしい
との相談の申出をしたときであっても,
次の(1)~(3)など判示の事情の下においては,
Y社において上記申出の際に求められたXに対する事実確認等の対応をしなかったことをもって,
Y社のXに対する損害賠償責任を生じさせることとなる信義則上の義務違反があったとはいえない。

 (1) 上記体制の仕組みの具体的内容は,
Y社において上記相談窓口に対する相談の申出をした者の求める対応を
すべきとするものであったとはうかがわれない。

 (2) 上記申出に係る相談の内容は,
Xが退職した後に上記グループ会社の事業場外で行われた行為に関するものであり,
Aの職務執行に直接関係するものとはうかがわれない。

 (3) 上記申出の当時,Xは,既にAと同じ職場では就労しておらず,
上記申出に係るAの行為が行われてから8箇月以上経過していた。

未払賃金等支払請求上告,同附帯上告事件【ハマキョウレックス事件】

最高裁第二小法廷 平成30年(2018年) 6月1日

判示事項
1 有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が
労働契約法20条に違反する場合における当該有期契約労働者の労働条件の帰すう
2 労働契約法20条にいう「期間の定めがあることにより」の意義
3 労働契約法20条にいう「不合理と認められるもの」の意義
4 無期契約労働者に対して皆勤手当を支給する一方で有期契約労働者に対して
これを支給しないという労働条件の相違が,
労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例

裁判要旨
1 有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が労働契約法20条に違反する場合であっても,
同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と
同一のものとなるものではない。

2 労働契約法20条にいう「期間の定めがあることにより」とは,
有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して
生じたものであることをいう。

3 労働契約法20条にいう「不合理と認められるもの」とは,
有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると
評価することができるものであることをいう。

4 乗務員のうち無期契約労働者に対して皆勤手当を支給する一方で,
有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,
次の(1)~(3)など判示の事情の下においては,
労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たる。

(1) 上記皆勤手当は,出勤する乗務員を確保する必要があることから,
皆勤を奨励する趣旨で支給されるものである。

(2) 乗務員については,有期契約労働者と無期契約労働者の職務の内容が異ならない。

(3) 就業規則等において,有期契約労働者は会社の業績と本人の勤務成績を考慮して昇給することがあるが,
昇給しないことが原則であるとされている上,
皆勤の事実を考慮して昇給が行われたとの事情もうかがわれない。

地位確認等請求事件【長澤運輸事件】

最高裁第二小法廷 平成30年(2018年) 6月1日

判示事項
1 有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることと労働契約法20条にいう「その他の事情」
2 有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が
労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否かについての判断の方法
3 無期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給する一方で
定年退職後に再雇用された有期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給せずに
歩合給を支給するという労働条件の相違が,
労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例

裁判要旨
1 有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは,当該有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かの判断において,労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮されることとなる事情に当たる。

2 有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否かを判断するに当たっては,両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく,当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきである。

3 乗務員である無期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給する一方で,定年退職後に再雇用された乗務員である有期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給せずに歩合給を支給するという労働条件の相違は,両者の職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲が同一である場合であっても,次の⑴~⑹など判示の事情の下においては,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらない。

⑴ 有期契約労働者に支給される基本賃金の額は,当該有期契約労働者の定年退職時における基本給の額を上回っている。

⑵ 有期契約労働者に支給される歩合給及び無期契約労働者に支給される能率給の額は,いずれもその乗務するバラセメントタンク車の種類に応じた係数を月稼働額に乗ずる方法によって計算するものとされ,歩合給に係る係数は,能率給に係る係数の約2倍から約3倍に設定されている。

⑶ 団体交渉を経て,有期契約労働者の基本賃金が増額され,歩合給に係る係数の一部が有期契約労働者に有利に変更されている。

⑷ 有期契約労働者の賃金体系は,乗務するバラセメントタンク車の種類に応じて額が定められる職務給を支給しない代わりに,前記⑴により収入の安定に配慮するとともに,前記⑵により労務の成果が賃金に反映されやすくなるように工夫されたものである。

⑸ 有期契約労働者に支給された基本賃金及び歩合給を合計した金額並びに当該有期契約労働者の賃金に関する労働条件が無期契約労働者と同じであるとした場合に支払われることとなる基本給,能率給及び職務給を合計した金額を計算すると,前者の金額は後者の金額より少ないが,その差は約2%から約12%にとどまる。

⑹ 有期契約労働者は,一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることができる上,その報酬比例部分の支給が開始されるまでの間,調整給の支給を受けることができる。

未払賃金請求事件【日本ケミカル事件】

最高裁第一小法廷 平成30年(2018年) 7月19日

判示事項
雇用契約において時間外労働等の対価とされていた定額の手当の支払により
労働基準法37条の割増賃金が支払われたということができないとした
原審の判断に違法があるとされた事例

裁判要旨
使用者が労働者に対し,雇用契約に基づいて定額の手当を支払った場合において,
当該手当は当該雇用契約において時間外労働,休日労働及び深夜労働に対する対価として
支払われるものとされていたにもかかわらず,
当該手当を上回る金額の割増賃金請求権が発生した事実を
労働者が認識して直ちに支払を請求することができる仕組みが備わっていないなどとして,
当該手当の支払により労働基準法37条の割増賃金が支払われたということができないとした
原審の判断には,割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。

地位確認等請求事件【日本郵便事件】

最高裁第二小法廷 平成30年(2018年) 9月14日

判示事項
1 郵便関連業務に従事する期間雇用社員について満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨の就業規則の定めが労働契約法7条にいう合理的な労働条件を定めるものであるとされた事例
2 郵政民営化法に基づき設立されて日本郵政公社の業務等を承継した株式会社がその設立時に定めた就業規則により同公社当時の労働条件を変更したものとはいえないとされた事例
3 期間雇用社員に係る有期労働契約が雇止めの時点において実質的に期間の定めのない労働契約と同視し得る状態にあったということはできないとされた事例

裁判要旨
1 郵便関連業務に従事する期間雇用社員について
満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨の就業規則の定めは,
次の⑴,⑵など判示の事情の下においては,
労働契約法7条にいう合理的な労働条件を定めるものである。

⑴ 上記期間雇用社員の従事する業務は
屋外業務,立った状態での作業,機動車の乗務,機械操作等であるところ,
当該就業規則の定めは,高齢の期間雇用社員について,
これらの業務に対する適性が加齢により逓減し得ることを前提に,
その雇用管理の方法を定めたものである。

⑵ 当該就業規則の定めの内容は,
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に抵触するものではない。

2 日本郵政公社の非常勤職員であった者が
郵政民営化法に基づき設立されて同公社の業務等を承継した
株式会社と有期労働契約を締結して期間雇用社員として勤務している場合において,
当該株式会社は,当該株式会社が同公社とは法的性格を異にしていること,
当該者が同公社の解散する前に同公社を退職していることなど
判示の事情の下においては,期間雇用社員について満65歳に達した日以後は
有期労働契約を更新しない旨をその設立時の就業規則に定めたことにより,
同公社当時の労働条件を変更したものということはできない。

3 期間雇用社員に係る有期労働契約は,
満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨の就業規則の定めが
当該労働契約の内容になっていること,
期間雇用社員が雇止めの時点で満65歳に達していたことなど
判示の事情の下においては,当該時点において,
実質的に期間の定めのない労働契約と同視し得る状態にあったということはできない。

未払賃金等,地位確認等請求事件【平尾事件】

最高裁第一小法廷 平成31年(2019年) 4月25日

判示事項
使用者と労働組合との間の合意により当該労働組合に所属する労働者の
未払賃金に係る債権が放棄されたということはできないとされた事例

裁判要旨
使用者と労働組合との間の当該労働組合に所属する労働者の
未払賃金に係る債権を放棄する旨の合意につき,
当該労働組合が当該労働者を代理して当該合意をしたなど,
その効果が当該労働者に帰属することを基礎付ける事情はうかがわれないという事実関係の下においては,
これにより当該債権が放棄されたということはできない。

まとめ

随時、更新していきます。
社労士受験生の学習の一助になれば幸いです。

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kuma